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こんな疑問に答えます。 本記事では、建築基準法における『排煙設備』について、わかりやすく解説。 床面積500㎡を超える建物は、排煙設備の要否判定や設置基準の検討が必須となるため、中規模~大規模建築物を計画する設計者にとって役立つ情報かと。 このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。 1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。 排煙設備とは【自然排煙と機械排煙の2種類】『排煙設備』とは、火災時に発生した煙を屋外に排出し、避難時間を確保するための設備です。 一酸化炭素中毒を防ぎ、煙による視界不良で非常口を見失うリスクを避けることが目的。 建築基準法では、施行令126条の2に設置基準が定められています。
排煙設備の構造は、大きく分けて2種類。
『自然排煙設備』は、煙が自然に上へと立ち昇る性質を利用して、室内の天井付近に設けた開口部(窓)によって、煙を排出する方式。 『機械排煙設備』は、排煙機器をつかって、ダクトを通して屋外に煙を排出する方式です。 排煙設備が必要な建築物建築基準法において排煙設備が必要となる建築物は、以下のとおり。
つまり、設計する建築物の用途や規模、排煙無窓の居室の有無によって排煙設備の設置が必要かどうかが決まるわけですね。 以下のフローチャートで排煙設備の要否をチェックしてみてください。 上図を見ると、排煙設備が建物全体に必要な場合と、居室のみに必要な場合に分かれていますよね。 「建築物全体に排煙設備が必要」な場合、居室だけでなく、倉庫や更衣室といった「室」や廊下などの「通路」にも排煙設備が必要となります。 ただ、トイレ・倉庫など各室すべてに排煙設備を設置している建物は少なく、建築基準法による「排煙設備の緩和規定」を活用して免除しているケースが多いです。 排煙設備が免除される建築物【令126条の2・告示1436号】「排煙設備が免除される建築物」の用途と条件を一覧表にまとめると以下のとおり。 ✔ 排煙設備が免除される建築物
火災の発生するおそれが少ない建物用途や、高機能の消火設備を備えた建築物で、上記にあてはまる場合は排煙設備の検討が不要です。 さらに、排煙設備が免除される「建築物の部分」もあります。 以下のいずれかに当てはまる「建築物の一部」は、排煙設備の設置が免除可能。 ✔排煙設備が免除される建築物の部分
✓ 関連記事 自然排煙設備の設置基準建築基準法に定められた、自然排煙設備の設置基準をまとめると以下のとおり。 ✔ 自然排煙設備の設置基準
500㎡から2000㎡程度の中規模建築物であれば、機械排煙ではなく、自然排煙設備を採用するケースが多いかと。 よって、ここからは自然排煙設備の設計を想定して解説を進めます。 防煙壁(防煙垂れ壁)とは防煙壁とは、火災時の煙をさえぎるために設置する天井から50㎝以上の垂れ壁のことです。 自然排煙設備において、排煙するための開口部は、防煙壁(垂れ壁)の上部までしか認められません。 防煙垂れ壁は原則として天井から50㎝以上必要となるものの、「防煙垂れ壁30㎝」と「常時閉鎖 or 随時閉鎖の不燃扉」の組み合わせであれば、30㎝まで短くすることが可能。 上記の緩和方法は、建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)という書籍に掲載されています。 可動式の防煙垂れ壁の設置方法など、全国共通で使える見解が多数収録されているので、排煙設備の設計では必須の本。 『防煙垂れ壁』の設置基準とは|建築基準法による構造・高さを図解という記事でも詳しく解説しているので、ご参考までにどうぞ。 防煙区画とは防煙区画とは、煙をさえぎる防煙壁(防煙たれ壁)によって建築物を区画すること。 排煙設備が必要な建築物は、最大でも500㎡以内ごとに防煙区画をしなければいけません。 例えば、500㎡を超える部屋だと、500㎡以内ごとに、天井から50㎝の防煙壁を設けるわけですね。 詳しくは、『防煙区画』の設計方法とは|建築基準法による床面積500㎡の区画という記事で解説しているので、ご確認ください。 防煙区画の水平距離30mの算定方法防煙区画内は、区画のどの位置からでも、すべての排煙窓まで30m以内ごとに到達させることが原則。 ただ、以下のような法解釈で、防煙区画の30mの距離を算定している特定行政庁もあります。
それぞれの排煙口が負担する面積をわり出し、エリア分けすることによって、「防煙垂れ壁」の設置を免除しているわけですね。 他の市町村で、上記の取り扱いをもとに設計する場合は、事前に申請予定の確認検査機関に相談することをおすすめします。 手動解放装置(オペレーター)とは手動解放装置(オペレーター)とは、ざっくり言えば、排煙窓を手動で開くためのスイッチのこと。 引き違い窓などを排煙窓として設計する場合は、クレセントが手動解放装置とみなされ、設置する高さが制限されます。 例えば、京都市の建築基準法ハンドブックによると以下のとおり。
排煙口(排煙窓)とは排煙口は、屋外に煙を排出する開口部のことで、排煙窓とも呼ばれます。 排煙口を開き窓とする場合は、開放できる角度によって、排煙面積が減少する場合があります。 シンプルにいうと、「開放角度が45°以上であれば、排煙窓全体を排煙に有効な面積として算定可能」ですね。 自然排煙設備の排煙口は、できるだけ45°以上開放できるように配備しましょう。 排煙口(排煙窓)の詳しい基準を知りたい方は、【排煙設備】排煙窓の設置基準|天井高3mの室における緩和も図解という記事をご確認ください。 機械排煙設備の設置基準『機械排煙設備』には、自然排煙設備と同じ基準が適用され、さらに排煙機や予備電源などの条件が追加となります。 ✔ 機械排煙設備の設置基準
排煙設備について建築基準法を読む排煙設備の設置基準は、建築基準法の施行令126条の2の規定。 建築基準法を読むのが苦手という方は、最低限建築法規PRO2022 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2022といった書籍で、図や表を見て理解しておきましょう。
排煙設備を免除するために何度も読むことになる「建設省告示1436号」は、上記のとおり”施行令126条の2第1項五号”にもとづく緩和規定です。
まとめ
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